自転車に乗っていたら、歩道に寝っ転がって、頭を車道に出している酔っ払いを見かけた。
私は酒がほんとど飲めない。昔の体育会時代のように酒を強要してくる人は嫌いだ。ただ、周りを明るくさせる陽気な酔っぱらいは好きだ。酔い潰れるほど酔っ払う人は憎めない。
生まれ変わったら「北の国から」の田中邦衛のように酔っ払いたいと本気で思っている。
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若かりしころ、神戸に住む友人と大阪で飲んだ後には必ずと行って良いほど各駅停車の終点、西明石駅まで乗り過ごしていた。
「大阪のタクシーは5,000以上は半額やけど、西明石は全額取られるねん」
彼はいつも笑いながら話していた。西明石から徒歩で帰ろうとした道中記や、JR在来線だけではなく、新幹線でも武勇伝を持っていた。新神戸から京都の移動中、うっかり寝過ごして起きたら名古屋だった話しなどは、何度聞いてもおもしろかった。 昭和の香りのする武勇伝である。
周りを明るくさせる、彼の酔っぱらい振りを見るのが好きだった。
たびたび乗り過ごして家に帰らないので、奥さんが激怒している話をよく聞いていた。彼と飲みに行くのは楽しかったので、いつの頃からか、彼と飲んだ後は、私の最寄り駅から5駅離れた駅の改札まで奥さんを呼び出して送り届けるようになった。
彼が関東に転勤になるまで、一緒に飲みに行ったら最寄り駅まで送るのが習慣になった、その頃の私の携帯には奥さんの電話番号を入れていたはずだ。奥さんが安心して彼を飲みに出させてくれたら良いなと思いながら。
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さて、昨日の話である。
歩道の一部分が車が乗り入れるために、坂道になったところがある。そこに車道に背を向けて座り込んでしまった酔っぱらいが、そのまま転んでしまうところを目撃してしまった。
早く帰りたかったのだが、目にしたのは路肩に頭が出た状態。アスファルト部分ではないので、車のタイヤがそこを通過する可能性は少ないでしょうが、明日のYahoo!ニュースの地域ニュースの欄で、おなくなりになったことを知ると後悔しかないと思い、酔っぱらい男性に声をかけることにしました。
酔っぱらいの彼は、カバンを斜めがけにして、なくさないようにしていた。しかし、よく見れば時計が1mほど離れたところに転がっているし、ズボンの後ろポケットには財布が入っているし、そちらの方も大変危険な状態。
酔っ払いの彼は40代ぐらいだろうか。ジーンズ生地のカーゴパンツを履いていて、腰にはペンチをぶら下げていたから、電気工事の仕事でもしてる風貌であった。
声かけには応じるものの、自分で体を動かすことができなかった。若い頃は柔道かラグビーをやっていたようなそんな感じだった。ひっぱり起こそうと思ったが、持ち上がらなかった。
5分ほど声かけていると、「ここはどこだ?」と聞き始めた。自分の家が近いことに気付いたら、それから程なく起き上がり、千鳥足で自分の家に帰っていった。
家までは50mほどあったので、すこし気がかりであったが、私も早く寝たかったので、自転車で立ち去った。
今朝のYahoo!ニュースに死亡事故の記事が無いことを祈るばかりである。
酔っぱらいから、「酔い潰れたけど気がつけば家に帰っていた。財布も無事だった」という話を昔よく聞いた。彼らなりの武勇伝だが、ただ何もなかったのではなく、いろんな事件を忘れているだけかもしれない。
その無事だった裏には助けてくれた人がいるのかもしれない。そうやって助けてくれる人を引き寄せる何かを持っている人なのかも。