43号線を西へ東へ

フリーランスの備忘録、アウトプットの実験場

持ち帰って考えることのできないレフリーの判断スピード

このブログはプロモーションリンクを含むときがあります


2週連続でラグビー観戦に行ってきました。

ラグビーのプロリーグはリーグONEと言います。南半球はシーズンオフの夏を迎えている現在、ニュージーランド代表(オールブラックス)や南アフリカ代表選手が日本に集結しているので、レベルの高いゲームが楽しめるリーグです。

ゲームを見ていて感じるのは、レフリーの判断力の速さです。

実際私がグランドに立ってレフリングをするのは絶対無理だなぁと今回痛感したので、振り返っておきます。

スピーディーな展開の中で、走り回りながらゲームをコントロールするレフリーには素早い判断力が求められます。選手がごちゃごちゃ密集してボールの争奪戦を繰り広げる中、選手たちに状況を伝えてルールに従うように声掛けをする。反則があっても、それが相手を利するようであればそのまま流し、無ければ迷わず笛を吹く。

ラグビーのルールを知らない友人と試合を見に行くことがたまにあります。そういうときは大抵、横で私がレフリーの判定を解説します。経験者だけあってルールには詳しいです。ただ、その時のプレーやレフリーの判定を解説するのは、後付けなので簡単です。ルールとゲームを知っていればできること。

自分が笛を吹いたら、笛を吹くかどうか瞬時に判断できるだろうか?

30人を4人のレフリーで瞬時に裁く、レフリーは重労働

ラグビーのレフリーは4人います。

  • 笛を吹くレフリー(主審)
  • 二人のアシスタントレフリー(私の頃はタッチジャッチ)
  • テレビジョンマッチオフィシャル(TMO)

オーケストラのマエストロ的な役割を主審が担います。主審が笛を吹くまでプレーは続きます。

フィールドにいるプレーヤーは30人、ボールを中心に敵味方がぶつかり合います。30人を裁くためには、レフリーは視点を広く取らないといけません。しかし、タックル前後はボールの争奪戦が繰り広げられるため、反則が多いタイミングです。遠くから見ていると大事な事象を見逃してしまいます。

中継のスローで見ても判断の迷う判定を、瞬時に行うレフリーの苦労と、それを実現するための日々の努力はいかほどかとお察しします。

私がプレーしていた頃よりも、試合のスピードやテンポが速くなっています。レフリーの判断するスピードは求められる一方、アマチュアスポーツからプロ混在のスポーツにラグビーは変わりましたので、判定の重みがお金に直結します。

そのような事情もあって、以前は一人だったレフリーが、4人になった理由でもあります。

*昔はライン際でボールが外に出たかどうかを判断するタッチジャッチがいましたが、現在はアシスタントレフリーと名前と役割を変えています。ヘッドセットをつけて、試合中はレフリーと連絡を取り合い、レフリーの死角を埋める助手として活躍されています。

ルールブックは俺

レフリーは全員が同じレフリングをするわけではありません。反則はルールブックに事細かに規定されているものの、反則は白黒きれいに分かれてはいません。どちらともとれる「グレーゾーン」が広めに設定されています。

ラグビーの基本ルールの一つに「ボールを前に投げてはいけない」というものがあります。「スローフォワード」とよばれるこのルールは、大目に見られているものの一つです。スローフォワードと判定されると相手ボールのスクラムから再開されるのですが、スローフォワードかどうか微妙な場合は、見逃されることの多い反則の一つ。

スクラムから再開にするとプレーが止まってしまうことで、ゲームの面白さが失われてしまうため流しやすい傾向です。明らかなスローフォワードは罰するが、疑わしきはセーフにされることが多いです。

また、「スローフォワード」を行うことで大幅な利益を得ていないポイントも大事になります。その前に投げるパスで得点を取ってしまった場合は、明らかに反則をすることで利益を得ているので、きちんと反則を取ることが多いようです。

どこまでを流す(笛を鳴らさない)か、それはレフリーの一人一人の基準に任されています。

そのような意味でも、レフリーがルールです。

レフリーがいるのは観客席ではない。戦場の最前線にいる

選手ほどではないですが、レフリーはよく走ります。ボールの近くにいないと視界が限定されて、判定はしにくいことが多いので、レフリーにはまず走力が求められます。

また、ルール違反を見つけるだけではなく、ゲームを邪魔しないことも求められます。選手の進路を遮らない、パスの軌道に入らない、プレーをよく見ようとして近づきすぎたら、邪魔することにもなりかねません。逆に離れていても、相手チームのディフェンスの穴に走り込もうとしたときに、その前にレフリーが立っていたら、ゲームを壊すことになります。

どのように攻めるかは、チームによっても、状況によっても変わります。レフリーがどこに立てば良いかが決まっていない状態で、常にどこに立つのかを考えながらプレーを見続ける必要があります。

観客席でじっとしているのではなく、最前線で選手に衝突される危険と背中合わせな状態で、絶えず立ち位置を変えながらプレーを見続けるのがレフリーの仕事です。おそらく、チームの戦術によって攻撃のエリアが異なってくるので、それぞれのチームの特色も知らなければゲームをコントロールできないのだろうなと思います。

「持ち帰って考えます」ができないのが、レフリーの仕事

仕事では決裁権がなければ「持ち帰って考える」ことが可能ですが、試合には80分という尺があります。ゲームが流れている状態ですから笛を吹くなら吹く、流すなら流すことを、試合の最高意思決定者のレフリーは毅然と示さなければなりません。迷っても持ち帰ることができません。

都度判断を瞬時に繰り返してゲームを進めていくレフリーの頭の中を想像すると、非常にシステマティックにゲームで起こる事象を判断しながらやっているのだろうなと想像します。

現在リーグワンでは、公平を期すためにテレビジョンマッチオフィシャル(TMO)が設けられて、グランドのスクリーンでレフリー3人がTMOとともにビデオ判定を行う光景が多く見られます。これはレフリーができる唯一の持ち帰りかもしれません。

最後に

試合を見に行ったときに、観客席からゲームを見ながらレフリングのシミュレーションをやろうと思ったら、レフリーの立ち位置すら分からず、即効で頓挫しました。ゲームの見方はいろいろありますが、ボールを追うのもよし、推しの選手を追うのもよし。今回からはレフリーの目線を追ってみようと思いました。

昨年のユニバー記念競技場の記事

先週と今週の試合の出場メンバー