
映画「国宝」を観てきました。
「国宝」は、175分(約3時間)という長尺映画でしたが、引き込まれて最後まで観てしまいました。トイレにも立たず、日常に戻ることなく、作品に引き込まれていました。

演技が良かった。映像がきれいだった。
おすすめできる映画でした。ネタバレ満載ですので、未鑑賞の方はお気をつけください。
以下、歌舞伎のことも曽根崎心中のことも全く知らない、素人の戯れ言です。
ピンと張り詰めたストーリーと演技
任侠の一門に生まれながら、女形としての才能を見出され歌舞伎役者の家に引取られた少年、喜久雄(吉沢亮)。彼はやがて、その家の御曹司と切磋琢磨し芸に青春を捧げていく。
喜久雄が歌舞伎の世界に入門してから国宝に選ばれるまで、1964年から2014年(?)の約50年を描いたストーリー。長丁場でもピンと張り詰めた空気を緩めず、最後まで引き込むストーリーとテンポは見事でした。
演技が良かった。
演技が良いというのは、私にとっては映画鑑賞中に興ざめないこということです。
言葉のイントネーションはその一つ。「国宝」の舞台は上方歌舞伎、大阪や京都の描写が多いので関西弁が出てきます。付け焼き刃の関西弁は違和感しかありませんが、今作品は全く違和感がありませんでした。
渡辺謙と寺島しのぶは関西にゆかりがありますが、吉沢亮、横浜流星ともに関東の出身。上手にお話しされていました。
あと、よくテレビドラマであるシーンなのですが、全演者が黙って頷くシーンを顔のアップが繋がるようなシーンは、臭すぎて興醒めします。本作ではそのような時も吉沢亮は1人でした。
曽根崎心中の代役を演じ終えた後、緞帳(どんちょう」が降りた舞台の上で、吉沢亮にお疲れさんと声をかけたのは1人、たった1人でした。その後は孤独な状態が描かれています。
また、吉沢亮が歌舞伎界から半分追放されてドサ周りで食い繋ぎますが、あまりのどん底ぶりに、最終的に森七菜も去っていきます。1人屋上で踊る吉沢亮が印象的でした。
演出は監督がするもの。観客の観る演技とは、俳優の演技力の有無よりも、監督の世界観が大きいような気がします。くどい台詞やカットの切り替えも最終的に監督責任。
喜久雄(吉沢亮)が、花井半次郎(渡辺謙)の代役を任されたときの稽古で、何度も繰り返されるこの台詞。
「この上は徳さまも死なねばならぬ品なるが、死ぬる覚悟がききたい…」(曽根崎心中より)
(NHK for Schoolから引用)
曽根崎心中(近松門左衛門) | 10min.ボックス 古文・漢文 | NHK for School
吉沢亮が渡辺謙にどやされながら演技を学んでいくこのシーンで、この台詞にいかに心を込められるかが、女形として重要な役作りであるかを叩き込まれます。
本作品の勘所だと思います。
「この上は徳さまも死なねばならぬ品なるが、死ぬる覚悟がききたい…」
吉沢亮のこのセリフを聞くためだけに、もう一度見にいきたいシーンです。
色鮮やかな舞台とくすんだ現実世界、厚みのある映像
カメラワーク
演劇を見る時は基本的には観客席に座って引きのポジションで見るわけですが、本作品は舞台の上からのカメラで演者の細かい振りや表情を映し出しています。
迫力があり、女型の動きの細やかさがよく見えます。
### 作品の色彩
作品の全体は色味が落ち着いた色味で重厚感がありますが、舞台の上はコントラストがはっきりしていて明るくて華やかです。
映画では色味で世界観を表現することが多々あります。
映画「マトリックス」では、仮想現実と現実の二つの世界を異なるカラーフィルターで描き分けていたと聞きます。仮想現実「マトリックス」内は黄緑〜緑のフィルターが用いられて、「ザイオン」などの現実世界では、ブルー・シアン寄りの脱鮮された寒色系が強調されています。
映画「哀れなるものたち」では、主役のベラが成長に伴って作品の色彩が変化していきます。物語の最初のドクターゴッドウィンの屋敷はモノトーン、その後世界旅行を始めると色彩が追加されていきます。カラーがベラの目覚めと世界観の拡大を象徴する面白い映画でした。
本作品「国宝」でも舞台と現実の対比を意識して色味を変えていたのかなと思います。映像監督(ソフィアン・エル・ファニ)は海外の方でした。厚みのある映像だったと感じました。
味のあるバイプレーヤー
歌舞伎役者の一生を描いた本作品、主人公の一生の描くステージに関わりのある役者さんたちの個性が素敵でした。重みと深みが出ます。
エンディングは井口理の歌声でした。King Gnuではなく、音楽担当の方が作曲したもの。
「女性ボーカル?いやいや井口だわ」
King Gnuのバラードぽい曲を聞いた時に女性の声かといつも間違います。男性なのに伸び上がる高音域を自在に操れる声質と歌唱力は私の中では唯一無二の存在です。
しんみりしたラストを迎える作品に井口理の声はしっくりきますね。女型を描いた作品の最後を締めくくるにはぴったりかも。クレジットが終わるまで最後まで心地よく鑑賞できました。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | 国宝 |
| 劇場公開日 | 2025年6月6日 (映画.com) |
| 上映時間 | 175分 (映画.com) |
| レーティング | PG12 (映画.com) |
| 監督 | 李相日 (映画.com) |
| 原作 | 吉田修一(小説『国宝』) (映画.com) |
| 脚本 | 奥寺佐渡子 (映画.com) |
| 撮影 | ソフィアン・エル・ファニ (映画.com) |
| 音楽 | 原摩利彦 (映画.com) |
| 配給 | 東宝 (映画.com) |
| 主な出演者 | 吉沢亮(立花喜久雄)/横浜流星(大垣俊介)/高畑充希(福田春江)/寺島しのぶ(大垣幸子) (映画.com) |
