
とっても考えさせられる映画だった。
まず大事なのは、現代では安楽死と尊厳死が明確に分かれているらしい、ということを理解しておくこと。
呼吸器や胃ろうなど、医療の技術によって生命をつなぐことを否定する尊厳死は割と肯定的に捉えられている印象を受けるものの、安楽死については否定的な論調が多いように思う。
もし観に行かれる方がおられたら、事前にその二つの違いを明確にしてから見た方がよいです。違いが分からなかった私は、かなりモヤモヤして劇場を後にしました。
最初にまとめておくと、尊厳死とは痛み止めなどの緩和ケア以外は積極的な治療をしないもの、安楽死とは意識を消失させた上で、昏睡状態を生み出し生命維持機能を停止させるものというもの。
簡単なあらすじ(原作とは別物可能性あり)
近未来の日本、安楽死が特区の中で合法された。反安楽死の立場のジャーナリストが、若年性パーキンソン病で年々弱るパートナーとともに安楽死を行う施設に入所して内情を探りながら、そこで働く医師や安楽死を求める人たちと交流し、それぞれの人生を生きていく。
原作があります。医師の長尾和宏氏の2019年の出版で、舞台は2024年の設定。主人公がアルツハイマー型認知症の女性と、大幅に物語が変わっています。
安楽死と尊厳死の違いについて
言葉の定義。
まずは広辞苑から
安楽死とは「助かる見込みのない病人を、本人の希望に従って、苦痛の少ない方法で人為的に死なせること(広辞苑第7版)」である」
一方、尊厳死とは「一個の人格としての尊厳を保って死を迎える、あるいは迎えさせること。近代医学の延命技術などが、死に臨む人の人間性を無視しがちであることへの反省から生まれた概念(同)である」
医学的な安楽死と尊厳死の違い
リード文の最初に書いた文がそのまま医学的な違い。具体的にいろいろ調査しましたが、安楽死については、GPTのリミットがかかってしまうセンシティブな話題でした。まとめると、広辞苑と同じような表現に近づいてきました。
法律的的には?
原作者が考える終末期医療のあり方について
本映画の原作者長尾和宏医師が、日本医師会のホームページに終末期医療について述べています。
医療の発展に伴い「どこからが終末期」なのか分かりにくくなっている。
ここからが終末期というものがわかりにくい上、自分で延命処置不要の医師を書面化している人も少ないから、家族だけで終末期医療の方針を決めることが多いとのこと。
7割の方は口では尊厳死を望んでいるにもかかわらず、書面化している人2~3%に留まるとのこと。
「自分が意思表示できなくなったとき、どんな医療を望むかを事前に書いて残しておく意思表明書」をリビングウェルという。
安楽死について答えを出すのは困難だが、「余分な延命処置は不用」と書くぐらいならすぐに取りかかれそうである。
作品中では全く理解できないシーンが複数あって、なかなかの置いてけぼりを食わされた映画であるが、引き込まれるシーンも多かった。おもしろい/おもしろくないでは片付けられない映画であった。
