
2009年公開の映画、「月に囚われた男」がYouTubeで無料公開されていました。下記の動画リンクは予告編です。本編のリンクは下の方にあります。
低予算のSF映画と聞いていたので、しょぼいのかと思いきや、設定やストーリーに引き込まれて全然気になりませんでした。予告編すら見ずに鑑賞したので、いま予告編を見るとネタバレしまくっているので、何も見ずに鑑賞した方が楽しいです。
地球に帰りたくても帰れない、月の資源採掘企業の現場作業員、サム・ベルの話しです。
現在も月の資源に関してはかなり注目されているので、かなり先取り感のある映画ですね。
あらすじ(ネタバレ0)
地球の資源が枯渇した近未来の話し。月にあるヘリウム3という物質が地球の人類のエネルギー源として活用されています。月の採掘基地にいるたった一人のエンジニアであるサム・ベルという男が自動採掘機からヘリウム3を取り出して、輸送ポッドに載せて地球に送るという仕事をしています。

基地にはサムと人工知能ガーティ(GERTY)がいるだけ。サムの任期はあと2週間に迫ったとき、トラブルに巻き込まれます。
- タイトルにあるように囚われたとはどういうシチュエーションなのでしょう?
- 「オデッセイ」のように、取り残されて帰れなくなったのでしょうか?
- はたまた、エイリアンのように基地を乗っ取れたのでしょうか?
内容については、本編をお楽しみください
採掘物質「ヘリウム3」

本作で描かれる月面採掘の対象は「ヘリウム3」です。公開当時はSF的な設定にも見えたが、近年は月の資源利用が現実の宇宙開発テーマとして急速に注目されているようです。
特に月の南極域に存在するとされる水氷は、飲料水だけでなく酸素やロケット燃料にも転用できるため、将来の月面基地や火星探査の足場として重要視されています。
つまり『月に囚われた男』は、孤独な作業員の物語であると同時に、資源開発の最前線が地球外へ広がっていく未来を先取りした作品でした。
自動化および省力化された作業環境について(ネタバレあり)
月面基地での作業環境は、かなり自動化されています。採掘機械は外で稼働し、基地内ではガーティがサムの生活や作業を補助しています。それにもかかわらず、そこには完全な無人化ではなく、ひとりの作業員が配置されています。
ここがおもしろいです。
普通に考えれば、危険で孤独な月面作業など、すべてAIやロボットに任せればよい。人間を置く必要はありません。ましてや、3年契約の作業員を送り込むよりも、完全自動化したほうが合理的に見えます。
▶︎クリック注意!ネタバレあり
しかし本作では、企業はその解決策として「クローン」を選んでいます。
これは単なるSF設定ではなく、かなり皮肉が効いています。人件費、労働環境、労災、精神的負担、帰還コスト。そうした問題を正面から解決するのではなく、「代わりはいくらでも作れる存在」を用意することで処理してしまいます。つまり、労働問題を解決したのではなく、労働者のほうを交換可能な部品に変えてしまったのです。「企業はどこまで人間を資源化できるのか」と、問われているようです。
また、この映画が問うているのは、クローン技術そのものの是非だけではないと思います。
サムは記憶を持ち、家族を想い、帰る場所を信じています。たとえクローンであっても、本人にとってその感情は本物です。
妨害電波によって地球への直接的な通信が遮断されているので、サムと家族の通話はビデオメッセージ的な録画されたものです。今回のサムが知っている娘はまだ幼い少女で期したが、妨害電波の範囲外から地球にビデオ通話をしたときは、すでに妻は死亡し娘は15歳になっていた。そしてオリジナルのサムは地球で暮らしていたという。
クローンは寿命が3年しか持たないという設定になっています。3年を経過したサムは髪の毛が抜けて、鼻血が止まらず、急激に放射能汚染されたような健康状態になって死を迎えます。通常であれば3年の任期が終わって地球に帰るための転送ポッドと説明されて入ったケースは、実はクローンのサムを高熱焼却する棺桶であったりする。少なくとも3体のクローンが焼却されていた。
オリジナルの人間がいて資源として使われるのはクローン。クローンは人権を持つのか?そして人間らしさはどこに宿るのか、考えされられるテーマです。
悪役は暴走したAIではありません。AIガーティはむしろ、サムに寄り添う存在として描かれています。本当に恐ろしいのは、冷酷な機械ではなく、コスト削減の名のもとに人間性を切り捨てる企業システムのほうです。
2009年という時代を考えると、この設定には現実味があります。クローン羊ドリー以降、人間のクローン化は世界的な倫理問題として議論されていました。一方で、現在のように生成AIが仕事を代替する未来像は、まだ一般的ではありませんでした。
だから本作では、AIによる完全自動化ではなく、クローンによる労働の代替という発想が前面に出ているのかもしれません。
今見ると、そこが新鮮です。
現代なら「AIに仕事を奪われる」という話になりがちですが、本作では「人間そっくりの存在を、企業が都合よく使い捨てる」という形で、労働と人格の問題を描いています。省力化された未来のはずなのに、最後に搾取されているのはやはり人間です。
『月に囚われた男』の月面基地は、未来的な職場であると同時に、究極にブラックな職場でもありました。
是非、本編をお楽しみください!
スタッフ・キャスト
スタッフ
| 担当 | 名前 |
|---|---|
| 監督・脚本 | ダンカン・ジョーンズ |
| 製作 | スチュアート・フェネガン、トルーディ・スタイラー |
| 脚本 | ネイサン・パーカー |
| 撮影 | ゲイリー・ショー |
| 音楽 | クリント・マンセル |
キャスト
| 役名 | 俳優 | 日本語吹替 |
|---|---|---|
| サム・ベル | サム・ロックウェル | 平田広明 |
| ガーティの声 | ケヴィン・スペイシー | 石塚運昇 |
| テス・ベル | ドミニク・マケリゴット | 安永亜季 |
| イヴ・ベル | カヤ・スコデラーリオ | 嶋村侑 |
| トンプソン | ベネディクト・ウォン | 鈴森勘司 |
| オーバーマイヤーズ | マット・ベリー | 藤吉浩二 |
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