芥川賞作品 ハンチバックを読みました。
読んだきっかけ
友人に是非読めと強く勧められた本です。事前に入れられた著者の情報は下記の通り。
筋肉系の難病疾患患者で背骨が曲がる脊柱側わん症を患っていて、電動車椅子に乗っているのが著者。病気で筋力がないから背中が曲がって重い本を読むことつらいから、電子書籍が出来て一番喜んでいる人。
- 気切した穴をふさいでインタビューに答える、その姿がロックだ
- 短いから読め
以上が、友人の推薦の談でした。
友人は理学療法士なので、病院で数多くの身体障害をお持ちの方や気道切開した患者さんと接してきたのでしょう。身体障害をお持ちの方にロックという言葉が似合うとは思いませんでした。
感想
これから読む人のために老婆心ながらお伝えすると、
「ストーリーが風俗で始まり風俗で終わる」ということ。お子様には勧められる本では無いことは確か。
しかし読了の感想は大きく異なり面白い本だった。本質的には個人的な心の声が丁寧に書かれていて、引き込まれるように読んでしまった。
クロソイド曲線がないカーブのように、急激なストーリー展開による遠心力に振り落とされそうでついていくのが必死だったが、それも初読時の話し。全景が見えてしまえば、かなり作り込まれた「ジェットコースター」として楽しめます。
たぶんあと数回は読むと思います。
以下若干のネタバレあり
最初の設定からして「ワシのKindle壊れた?」って思うような書き出しで始まる意外性があり、ヒトの秘部をさらしまくっているのを隠れて傍観しているようなスリルを感じたし、途中で旧約聖書の引用がぶっ込まれるが意味が全くわからないので、その意味をわかりたくなったし、ラストは5回読み直して自分なりに納得できたが、それを答え合わせしたくなる本でした。
充分楽しみました。
レビューサイトをみて
読み終わると自分なりの感想が出てきます。そして他の人の感想を観たり聞きたくなります。それぞれ受け取り方が違うでしょうから、その違いを知りたくなりますので見回ってみました。
- 熱量とスピード感のある文体が好まれていて、筆者のパワーを感じた人が多かったようです。
- 重度障害者の主人公の妄想について社会的問題点を述べてるのもあります。「高級娼婦」「妊娠と堕胎」
- とてもストレートに「私は健常者だし、重度障害者の気持ちはわからないし、わかりたいとも思わない」と感想を述べられている人がいた。この人もロックだ。多様な意見をいえる環境を守りたい。
- やはり、ちらほらみられたのが「性的描写が不快」という意見です。半分同意します。読んでる途中は同じように思いましたが、前半、中盤、後半と性的描写のトーンを変えていますし、核となる中盤の性的描写は上品な描写に感じます。今となっては「人間くさくてよろしいですがな」と考えますし、なにより文章にする勇気をたたえたい。人類の繁栄の源ですし。
YouTubeで芥川賞受賞時のテレビの解説を見ましたが、その解説の軽くて綺麗なことに驚きました。芥川賞の話題を紹介しないといけないけど、性的描写のことは大人の事情で伝えることが出来ないという、テレビの限界を感じました。
障害をお持ちの方が身近におられるかどうかなど、障害をお持ちの方への理解のありようによって、この本の味わい方も変わるのではと思いました。
インタビュー記事
本当のことは作者のみぞ知るのであります。
主人公に投影された著者の割合は30%で、家族には読まないように伝えていたものの、これを読んだ父親からとはもめているそうです。