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脳内麻薬(セロトニン)だけでは乗り越えられなかった壁:ランニングの習慣化に向けた行動心理学的アプローチ

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多くの人にとってはランニングは苦痛でしかありません。ランニングが習慣になっている人は、走ることにメリットがあるから習慣になっているのだと思います。

行動心理学の本を読みました。行動を習慣化させることに行動心理学視点が大事だということを学びました。

苦痛を伴う行動とその習慣化の難しさについて、そして苦行であるランニングを習慣化させる方法を行動心理学分野から考察してみたいと思います。

苦行を習慣化する

私にとって苦痛であったランニングは、10年の時を経て再び習慣になりました。後期アラフィフ、0.1トン、アキレス腱の古傷が痛むような運動に適さない状態からなので、自分でもよく頑張ったといつも褒めています。

受動的な行動は習慣化するのは簡単です。たとえば映画やYouTubeを見る場合、スマホでポチッと操作するだけで、あとはリラックスして楽しむことができます。苦痛といえばスマホを見すぎて首が痛くなること、ソファーに長時間腰をかけていて腰が痛くなるということでしょうか。

やらない言い訳、見えないゴール

しかし、トレーニングやランニングのような能動的な行動には、苦痛が伴うことが多く、これを習慣化するには高いモチベーションが必要です。

言い訳はいくらでも見つかります。雨が降っている、暑い、足が痛い、今日は仕事が忙しい、など。

さらに、成果がでてくるのが遅いのです。すぐに体重が減らない、早くならないと言うことも続けられないひとつの要因です。実際のところ、ランニングの効果がいつ現れるのかは、始まる前には分かりません。

気力と体力と時間を費やすことにためらいを感じることも少なくありません。こうした状況では、強い意志やカラ元気でモチベーションを高めない限り、続けることは非常に困難です。

継続するためのご褒美とは。脳内麻薬で走らざるを得ない環境に置く

ランニングを始めた当初は、運動による脳内ホルモン、特にセロトニンの多幸感がランニングを続ける鍵だと考えていました。

しかし、続けていくうちに「セロトニンだけでは乗り越えられない壁」があることに気づきました。

その壁を乗り越えるためには、もっと理論的なアプローチが必要でした。ここで、自分の行動を振り返り、ランニングの習慣化には「気持ち」だけでなく、「データ」と「行動心理学」の視点が重要であることを感じました。

オペラント条件付け理論から見るランニングの習慣化

後から振り返ると、私はランニングを続けるためにオペラント条件づけ理論に基づいていろんな事をやっていたように思います。

オペラント条件付け理論は、1930年代にB.F.スキナーが提唱した心理学理論です。行動の後に生じる結果によって、その行動の発生頻度が変化するというものです。

Wikipediaより)

後述する「正の強化」「負の強化」によって、ランニングを継続することができました。

正の強化(Positive Reinforcement)

正の強化とは、良い報酬があった行為は継続しやすくなるということです。マウスの檻に餌が出てくるボタンがあれば、ボタンを押す行為は習慣になります。

そのほか、正の強化には以下のようなものがあります。

  • テストで良い点を取ると、褒められる
  • 仕事で成果を上げると、昇給する・ボーナスが増える
  • 友人に親切にすると、感謝されて良い関係が気づける
  • 定期的に運動すると、体力がついて健康的になる

一番下の例は一般的な例です。普通の人なら前向きにとらえられます。しかし過体重で常日ごろ足が痛かった走ることに適していない私の場合は、走ることが苦痛すぎてもっと徹底した正の強化が必要でした。

具体的には走行距離やペース、消費カロリーをグラフ化することで、成果を視覚的に確認するようにしました。改善しているのが視覚的にすることをご褒美としました。

ただ現実はそんなに上手く事は運びません。なかなか体重は減らない時期があったので、グラフ作成は揺れる私の心を支えるものになってくれました。また進捗をブログで公開することは効果的でした。皆さんのはてなスターとアクセス数の分、いつも励まされました。ありがとうございました。

目標である体重減少は達成していなくても、「走ることでこれだけカロリーを消費した、そのまま頑張れば痩せる」と信じることで、グラフが正の強化になりました。グラフ上で右肩上がりに走行距離と消費カロリーが増えていけば、その時、体重が減っていなくても「そのまま続ければ痩せる」と思い込むことは可能です。

負の強化(Negative Reinforcement)

負の強化とは、何かいやなことを取り除くことで、その行動をもっとするようになることです。具体例は以下の通りです。

  • 宿題を終わらせると、テレビを見てもいい
  • 期日前に仕事を終わらせると、上司からのプレッシャーがなくなる
  • こまめに片付けると、家が散らかるストレスが減る

このように、いやなことは早く終わらせる的なムーブも負の強化にあたります。

体を動かすことで、仕事のストレスや不安が減ります。逆にいうと、ブログのネタがなくなって頭の中が行き詰まった状態でストレスフルになったら、走れば良いのです。仕事の今後の見通しが立たない不安で超早起きしたときも、走れば良いのです。ランニングによるこのネガティブな感情の軽減も効果的でした。まとめると、

「走ると、ネガティブ感情が軽減される」

これがランニングを続ける動機づけとなりました。ランニングを続けることで、徐々に体調が改善され、不快な状態が減少するという長期的な効果も、継続を支える要因となりました。

部分強化スケジュール(Partial Reinforcement Schedule)

部分強化スケジュールとは、ある行動に対して報酬を毎回与えるのではなく、不定期に与える強化方法です。ギャンブル依存症はまさにこれにあたるものです。一度期待以上の報酬を得てしまうと、いつ報酬が与えられるか分からないものでも期待感が高まり、粘り強く台を打ち続ける状態になります。

部分強化スケジュールで強化された行動の特徴は以下の通りです。

  1. 予測不可能性:ご褒美をいつもらえるか分からない
  2. 耐久性:いちどやり始めたら、完全にご褒美がなくなっても継続する傾向がある。
  3. 期待感:ご褒美が時々しかもらえないので、次はもらえるかも!という期待感が膨らむ。そしてやり続ける。
  4. 習慣化:日常化すると、報酬がなくても維持できる。

ランニングとダイエットの関係で言うと、体重の変化も不定期です。一定に体重が減少するのではなく、減少期や増加期、そして停滞期があります。たまに1kg程度減少したときには、ご褒美がもらえてうれしい訳です。

体重の減少を報酬ととらえて取り組めば、たまに起きる体重の減少トレンドの波を待ちながら、ランニングを継続することができました。

現状の体重は一進一退で体重減少という報酬は少ない状態です。ただ脂肪量は減少していて体水分量が増えているなど、体組成の割合が健康的な方向に向かっています。

結論: データと心理学が支えるランニングの習慣化

ランニングを再開してから半年が経過しました。ランニングを習慣化させること、体重を減らすことを、最終的には事務所から走って帰ることを目標にやってきました。

一般的な体重の範囲でもつらいことなのに、病的に過体重の人間が走り続けるようになるには、精神力も大事ですが、苦痛しかないものにそれほど長くは続きません。何らかの報酬を設定して、習慣化させる方法を自分の行動を振り返ることで考察してみました。

専門分野外なので、オペラント条件づけ理論について思い違いしていることがあろうかと思います。コメント欄でお知らせください。

走った距離や消費カロリー、体重の増減を適切にレビューすることが立派な報酬になります。闇雲に走り続けるよりApple Watchや体重計等のログをとれる体制をつくることが重要だと再認識しました。