一気に読んでしまいました「喫茶おじさん」の感想です。
こちらの記事の続きになります。
「孤独のグルメ」の井之頭五郎を彷彿とさせる食べっぷり
主人公は喫茶店に行くとその店の内装や調度品、客層を描写します。そしてコーヒーの味わい、食事メニューの食レポを細かく行います。
軽く2件ほど喫茶店の梯子をするのですが、まあよく食べること。1件目でそこそこのボリュームのたまごサンドイッチ食べた後に、2件目でわキノコとベーコンのキッシュと和栗のタルトを平らげる50歳半ばのおじさんでした。
美味しそうな描写が続くところなどは、小説版の「孤独のグルメ」といってもいいのではないだろうか。五郎さんも体の線に似合わずたくさん注文しますものね。
1月に始まり12月に終わるものがたり
1月の出来事が第1章、2月が第2章というふうに続き、第12章で物語はひと段落します。そして最後にエピローグで後日譚が語られます。
定年を迎え脱サラに失敗したおじさんが、いろんなことに区切りをつけて地に足をつけたところで、再出発を切ります。
「何もわかっていない」状態から、一番大事なものに真剣に向き合って生きていくところを描いて、エピローグは終わります。
おじさんの5年後を描いた作品も読んでみたい。そんな作品でした。
著者が語る「喫茶おじさん」
著者の方がこの小説が生まれた顛末を書かれています。
「ずん」の飯尾和樹さんが喫茶店をめぐる番組をやっていらっしゃった。画面の中のコーヒーとおじさんはとても魅力的でした。
(---中略---)
「いっそ、喫茶店を小説にしてしまったら、好きなだけ回ることができるのではないか」と気がついたのでした。
なるほど。
最後に
小説の中には実店舗名は書いていませんが、東京の有名なコーヒー店がたくさん出てきます。あそこのことかな?と想像しながら読むのも良し、ネットで調べるのも良し、関東圏のコーヒーショップガイドとしても有用な本作品です。
主人公がフラフラしがちで、複数の女性に「あなたは何もわかっていない」と言われているところが、私自身に言われているようでした。コーヒー好きなところもあり、色々と引き込まれる作品でした。