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【黒医】きれい事ではない、実に人間くさい短編小説を読んだ

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久坂部羊(くさかべ よう)著、黒医を読みました。

きれい事は一切ないお話の連続。人間の内面のドロドロ感を、病気だったり、妊娠と出産だったり、お医者さんの人生だったりに絡めて描いている、なかなか味わい深い小説でした。

先日見た医療系テレビドラマ「アンメット ーある脳外科医の日記ー」の事を調べていたからだろうか、Amazonのおすすめに上がっていた「黒医」。

表紙には、白衣を着ている医者が黒い背景に座っています。このお医者さん、ずいぶん悪いことをするのでしょうね。タイトルと表紙に惹かれて一気に読んでしまった。

本作は七つの短編小説が収められています。

介護を必要とする重症な意識障害の患者や、元気な高齢者を支える現役世代の話しを取り上げながら、現代社会の問題点をあぶり出して、人間の内面を描きます。

収録7作品は以下の通り。

  1. 人間の屑
  2. 無脳児はバラ色の夢を見るか
  3. 占領
  4. 不義の子
  5. 命の重さ
  6. のぞき穴
  7. 老人の楽しみ

不義の子を取り上げて、テーマを考察してみたいと思います。

社会的規範や道徳的正義と、生存本能や生物学的に正しいことは異なります。

例えば不倫した人はその事実がおおやけになれば社会的制裁を受けます。しかし、男性の場合はより多くの自分の遺伝子を後世に残すこと、女性の場合はより強い遺伝子を受け入れること。これらは生物学的に考えると合目的な行動です。

人間は社会的な存在でもあり、動物でもある。これらの葛藤について深く抉る作品となります。

その他、高齢化社会社会保障、介護や医療、出生前診断などの事象を取り上げながら、

「それ言っちゃう?」と、ド直球な物言いにドギマギしてしまうことがたびたびある。

話の内容は重いものの、各話40ページ程度で気軽に読めるので、また読み返したい。