Netflixで配信中の「潜水艇タイタン-オーシャンゲート社が犠牲にしたもの」を見ました。
見応えのあるドキュメンタリーです。
「ハインリッヒの法則」と聞いてピンとくる、危機管理が好きな方におすすめです。
潜水艇タイタン沈没事故を覚えておられるでしょうか?
2023年6月18日頃、アメリカ合衆国の観光会社オーシャンゲート社が運航する潜水艇タイタン号が、カナダのニューファンドランド島沖合から南東740キロメートルの北大西洋上で潜水中に圧潰・沈没した海難事故です。
酸素の残り残量が刻一刻と減っていく中、乗員の無事を祈った方も多かったのではないでしょうか?私もその中の1人です。
残念ながら、カーボン船体の亀裂が原因の圧壊で乗員5名は帰らぬ人となりました。
「潜水艇タイタン-オーシャンゲート社が犠牲にしたもの」は、この事故原因を関係者へのインタビューで深掘りする作品です。
- 開発段階からの技術的な不安
- ワンマンでサイコパス気質のあるCEOの過信傾向のある思考
- アラートを発する社員との軋轢
- 次々とやめるベテラン技術者
などが、まとめられています。
タイタン号は、タイタニック号(1912年4月15日に沈没)への見学ツアー用の唯一の潜水艇でした。
タイタニック号は水深約3800mに沈んでいます。これは、地上付近の気圧の約400倍の水圧がかかる深さで、太陽の光も届かない暗黒の世界です。
その水圧に耐える潜水艇の素材として、オーシャンゲート社はカーボン線維を船体に使用しました。
タイタン号の直接の事故原因はそのカーボン線維の破断によるものとされています。
作品内でもタイタン号の事故を引き起こした原因はいろいろと述べられています。社長がクソだった事が1番の理由ですが、直前にも事故を回避するサインはありました。
映像中でも述べられていますが、カーボン線維が水圧で破断する時の音です。
2022年7月15日のDIVE80の
DIVE81、82(潜航81回目、82回目)とカーボン線維の破断を示すポップ音を感知する音響センサーが、明らかに増加していました。
ここで、検査と整備を怠ったのは明らかに悪手でした。2022年の潜航後にツアーはストップします。
異常を示し始めたタイタン号は、シーズンが終わっても本社に戻されることはなく、雪の降る港に放置されたままだったそうです。寒さによってカーボンの亀裂部分に結露が生じれば、より強度が低下すると技術者がインタビューで述べていました。
そして翌年の最初のツアー、88回目の潜航で事故が起きます。
タイタンの年表:開発~爆縮事故まで
年月 | 出来事 |
---|---|
2009年 | OceanGate社 設立(CEO:ストックトン・ラッシュ) |
2013年頃 | 深海探査用有人潜水艇「Cyclops 1」完成 |
2018年 | 試作機「Titan」初公開。炭素繊維とチタンの複合構造を採用 |
2019年 | テスト潜航開始(ただしタイタニック残骸付近への到達はなし) |
2020年 | コロナ禍の影響で運用計画が延期 |
2021年7月 | タイタニック号への初成功潜航。6回の深海潜航に成功 |
2022年7月15日 | Dive 80:上昇中に「異常音(acoustic event)」発生、構造劣化の兆候 |
2022年7月17日 | 2022年最後の潜航(実質的な最終運用) |
2023年6月 | 第5回Titanic遠征を実施。乗客は1人25万ドルのツアー参加者 |
2023年6月18日 | Dive 88:爆縮事故発生。乗員5名全員が死亡 |
🚢 🚢 🚢
ニュース性が高い時にはたくさん報道があるなか、後追いや結論の報告は少ないです。この「潜水艇タイタン-オーシャンゲート社が犠牲にしたもの」は見応えのあるドキュメンタリーでした。
過去に潜水艦に関する記事を書いています。
\よかったらご一読ください/